あらすじ
1960年代に、トルコからドイツに出稼ぎにきたフセインは、今や70代のおじいちゃんとなって、2人の孫にも囲まれている。
そんなある日、おじいちゃんは「故郷の村に家をかったから、みんなでそこへ行こう」と提案する。
反発する子供や孫たちだったが、おじいちゃんに説得されてしぶしぶおじいちゃんの故郷に行くことに。
そんな長い旅路の中で、すっかり退屈してしまった孫のチェンク。
彼のために、もう一人の孫であるチャナンが、おじいちゃんとおばあちゃんの出会いから、なぜおじいちゃんがドイツに来て、どんな生活を送ったのか、彼に語り聞かせるのだった。
「外国人」の受け入れ
2019年4月。あまりニュースにはなりませんでしたが、外国人の出入国を管理する「入管法」が改正されました。
改正の目的の一つは、日本の人手不足を解消。
今後、4年間で30万人前後の外国人労働者が日本にやってくることが想定されています。
こんな「節目」の時期だからこそ、「移民先進国」のひとつであるドイツでロングラン公演を記録した本作を見てみることにしました。
ガストアルバイター制度
この映画の舞台となるドイツでは、1960年代から大規模な外国人受け入れ制度を開始しています。
当初はイタリアやスペインなどの、現在ではEUに加盟する国々からの受入が多かったのですが、それでも労働者が足りなくなったため、やがてトルコからも受け入れを開始。
やってきたのは、大半が若い男性。主に肉体労働に従事した彼らは、賃金を本国へ仕送りをしていました。
「ガストアルバイター(「ゲスト労働者」)」とも呼ばれたから彼らは、やがては本国に帰国すると思われていましたが、結局は家族をドイツに呼び寄せて、ドイツで暮らすようになります。
現在では、ドイツで生まれた彼らの子供・孫たちがドイツ国内で数多く生活しており、中にはサッカーワールドカップに3回もドイツ代表として出場する猛者も。
ドイツの人口の15%程度が、トルコ系を含めた外国にルーツを持つ人々といわれています。
世代で異なる「言語力」
このため、トルコにルーツはもつものの、移民2・3世の「トルコ語」力は1世と比べると大きく違うことが考えられます。
実際、孫のチャナンはトルコ語をほとんど話せませんし、その親のトルコ語力も怪しいところ。
一方、おじいちゃんやおばあちゃんはドイツ語はもちろん話せますが、夫婦の会話はもちろんトルコ語。
こうした、世代で異なる「言語力」に注目してみるのも、本作の楽しみ方のひとつかもしれません。
宗教の違い
ご案知の通り、ドイツを含めたヨーロッパの国ではキリスト教が最も普及していますが、一方のトルコはイスラム教。
本作のみどころのひとつは、宗教の違いで起こるちょっとしたことをコメディタッチで描いてるところでしょうか。
十字架にかけられたキリストに子供たちが怖がったりする一方で、こどもたちは親からプレゼントをもらえるクリスマスというイベントに魅了されたりとか。
トルコをルーツに持ちつつも、少しずつ異文化に染まっていく様子も描かれています。
感想
本作はトルコ系ドイツ人による作品で、本作で使われているエピソードの多くは実体験から着想を得ているのでしょうか。
いかにも外国からやってきた人たちが体験しそうなエピソードが描かれています。
終始コメディタッチで、最後はホロっとさせる、おすすめの作品です。