【あらすじ】
バラエティ番組のリポーターである葉子はウズベキスタン共和国へ撮影のために訪れていた。
懸命に仕事をこなす葉子だったが、見知らぬ異国の文化を受け入れ、それを楽しむ余裕はまるでない。
唯一、素の自分に戻ることができるのは、ホテルに戻って日本にいる恋人と連絡を取り合う瞬間だけだった。
ハードな撮影が続く中、首都タシュケントにたどり着いた撮影クルーたち。タシュケントの街を歩いていた葉子は、ある劇場へと迷い込んでしまった。
細かな装飾が施された部屋を歩き、最後の部屋の扉をあけると、目の前には大きな劇場が広がっていた。
舞台で歌うことを夢として胸に秘めていた彼女は、そこで夢と現実が交差する不思議な体験をするのだった。
【ウズベキスタンってどんな国?】
名前は聞いたことがあるかもしれないけれど、どこにあるのか、どんな国かを知っている人はほとんどいないかもしれません。
ウズベキスタン共和国は、ユーラシア大陸のちょうど中央に位置する、シルクロードの交易路があった国。
かつては、旧ソ連に支配されていましたが、現在では独立。
国民の大半がイスラム教徒ですが、イスラム教では推奨されないお酒も容易に手に入れることができる「ゆるい国」です。
日本からなじみが薄い国ですが、2018年には観光目的の入国に限りビザが不要になったこともあり、旅行好きな人たちからは密かに注目されている国なのです。
数は少ないですが、成田空港からウズベキスタンまでは直行便が飛んでいます。
【旅の終わり世界のはじまりのロケ地】
葉子たちが訪れるのは、次のに4ヵ所。
(1)アイダル湖
・琵琶湖の4倍の大きさを持つ湖。ソ連時代の灌漑計画の際にたまたまできた大きな「水だまり」。
(2)サマルカンド
・ウズベキスタン第2の都市。抜けるような空の青さとモスクの色から「青の都」と呼ばれる場所。
(3)ザーミン
・隣国タジキスタンの国境にある山岳地。ウズベキスタン最古の国立公園がある。
(4)タシュケント
・ウズベキスタンの首都。旧ソ連の都市らしく、区画が整備された整然とした都市。
本作では、名前もないような道や街角での場面が多いのですが、道路が整備されていないサマルカンドの埃っぽさや、首都らしく洗練されたタシュケントの様子が映画を通じてよく伝わってきました。
もちろん、こうしたマイナーな場所以外にも、ウズベキスタンの観光名所もロケ地として使用されています。
そのひとつは、首都タシュケントにある「ナヴォイ劇場」でしょう。
実は、このナヴォイ劇場は、第2次大戦後にソ連に捕虜としてとらえられた日本兵が、ウズベキスタンに連れてこられた建築したもの。
1966年に発生した大地震でも無傷であり、日本の勤勉さを伝える象徴としてウズベキスタンで知られている、とか。
【旅先でのバスと夜】
作中では、自分のことを「用心深い」と話す葉子ですが、撮影のない時間は自分ひとりで街を散策したり、ローカルのバスに乗るなど結構アグレッシブに動きます。
著者も普通の人より旅慣れていると思いますが、「現地のバス」に乗車するのはけっこうハードルが高い気がします。
電車や地下鉄であれば路線図があるのでなんとなくどこに向っているかの推測はつくものですが、バスの路線図が明示されたバス停とかも少ないですし、当然、バスの運転手も日本語はもちろんのこと、英語も話すことはできません。
結局、昼過ぎに、バザールに向かうバスに乗車した彼女が、ホテルに戻ってきたのは夜遅くになってしまいます。
夜のサマルカンドを不安げに歩く葉子。夜道で男たちが話しているところに遭遇すると、男たちと距離をとるように壁際を歩きます。
日本と異なり、海外での夜の一人歩きは、周りに人がいてもちょっと緊張するので、人気のない道を歩く彼女の不安はいくばくか。。。
というか、旅好きな人からすると、海外の夜の街の一人歩きはまったく推奨できませんが。
【ウズベキスタンと警察官】
バザールの様子を手持ちのビデオカメラで撮影していた葉子は、撮影に夢中になり、仕事仲間とはぐれてしまいます。
そこで、うっかりカメラを回していた葉子は、ウズベキスタンの警察官に呼び止められますが、なんと、彼女は逃走(笑)。
結局、警察官に捕まってしまった彼女は、「あなたが逃げたから、追いかけたんだ」とウズベキスタンの警察と優しく諭されますが、実際はこれで済むのかは定かではありません。
ウズベキスタンは、非常に警察官の数が多く、地下鉄の駅や観光スポットには必ずいます。このため、治安は保たれてはいますが、逆に権力をかさにきて、悪さ(ワイロ)を働く警察官もいるとか、いないかと。
※ネット上でどのように噂されているか気になる人は、「ウズベキスタン 警察官」で是非検索を。
著者がウズベキスタンの滞在中に警察官に呼び止められたのは1回。空港にタクシーで入ろうとしたときです。ドライバーが悪態をついていたので、もしかしたら、国民から警察官は良く思われていないのかもしれません。
警察官が実際に「わるさ」をするかは定かではありませんが、ウズベキスタンは旅行者に対してもいろいろな制限がある国で知られています。
パスポートの携行がマストであることはわかるとして、このほかウズベキスタンに72時間滞在する人はホテルに「滞在登録証」というものを発酵する必要があり、場合によっては警察官にそれを提示する必要もあるとか。
また、(現在はそうでもないようですが)地下鉄構内の写真撮影、国内の規律を維持するためにポルノ画像等を持ち込ませないために、入国の際に携帯やパソコンの中身をしっかりとチェックされる、という話も聞いたことがあります。
【異文化との出会い】
主人公・葉子は、せっかくロケ先の現地人に勧めてもらった食事も最初は受け取らず、特に作品序盤では異文化と交流する積極的な姿勢を見せません。
正直、旅行好きな著者にとってはそんな態度が正直歯がゆい……(笑)。
作中でも、作中でも現地のウズベキスタン人も言っていた通り、「まずは話さないとわからない」。
もちろん、外国に行ったからといって、現地の人との交流は義務ではありませんし、時には危険に繋がることもあります。
本作では仕事なので、そもそもプライベートの時間が確保されておらず、「現地の人」とコミュニケーションをとる必要性がないというのはわかりますが、だからといって殻に閉じこもるのは、正直もったいないな、と思いました。
警戒心を好奇心を常に同居させながら楽しむのが、海外旅行の醍醐味ではないでしょうか。
なお、ウズベキスタンは親日国であり、また、「青の都」サマルカンドでは日本語を学習する人が多いです。
著者もウズベキスタン滞在中に、何度も現地人に話しかけられたり、一緒に写真をとったりしました。
【感想】
観る前は、正直全然期待していませんでしたが、意外に眠ることなく見ることができのは、著者が一度ウズベキスタンに行ったことがあるからでしょう。
映画のウズベキスタンの風景は、まるでウズベキスタンからそのまま輸入したような感じがしました。
主人公・葉子が歩いたサマルカンドの路地裏、タシュケントの大きな道路で、ウズベキスタンの旅を思い出すことができました。
なお、本作ではウズベキスタン最大の観光スポットである「レギスタンス広場」は一瞬しかうつりませんし、世界遺産にも登録されているブハラの都市はでてきません。
この映画を観て「ウズベキスタンは見どころないな」と判断してしまうのは、正直早計です。