【あらすじ】
大学教員をリストされたジョージアは、つなぎの仕事としてギリシャで観光ガイドをしていた。
古代ギリシャの歴史が好きな彼女だったが、担当するツアーの観光客は歴史に興味ゼロな旅行者ばかり。
すっかり、人生に対するケフィ(情熱)を失ってしまったジョージアだったが、ツアーバスの運転手からの思いがけないアプローチやツアー客の悩みや喜ぶさまを触れるにつれて、徐々に「ケフィ」を取り戻していくのであった。
【ギリシャ「本土」を舞台にした映画】
旅に関する映画を観続けている著者ですが、ギリシャを舞台にした旅映画はかなり多いです。
ギリシャのある島に住む女性の結婚式までの様子を描いた「マンマ・ミーア」、夏休みをギリシャのサントリーニ島で過ごす少女の話(も)描いた「旅するジーンズと16歳の夏」、中年夫婦の夏休みを描いた「ビフォア・ミッドナイト」。
ただし、これらの映画はギリシャの「島」を描いた作品ばかり。
本作は、ギリシャの島々ではなく、古代ギリシャの遺跡が数多く眠る、ギリシャ「本土」を舞台にした数少ない作品です。
【ギリシャ本土の観光名所】
本作では5日かけて、ギリシャ本土を周遊します。
実際に作品を見て確認してみましたが、少なくとも次の名所には訪れてますね。
1日目:古代アゴラ
ギリシャの首都アテネにある古代アゴラ。
アゴラとは現代では「市場」の意味。ただし、古代においてその意味はとても広く、政治、宗教、文化的施設が集積していたそうです。
2日目:オリンピア
オリンピック発祥の地。
古代オリンピックの始まりは紀元前8世紀までさかのぼるとされていますが、ローマ帝国時代の394年に一度廃止されたそう。
現在の形式のオリンピックが復活したのは、1896年。第1回はアテネで行われており、また、21世紀初めのオリンピックもアテネで行われました。
近代オリンピックの聖火リレーで聖火がともされる場所も、このオリンピアになるそうです。
3日目:デルフィ
古代ギリシャでは「世界のへそ」として信じられていた場所。
ギリシャ神話に出てくるアポロンを祀る神殿で下される「デルポイの信託」が有名だそうです。
4日目:どっかのビーチ
こちらは全くわからなかった。どこだろうか。
5日目:アクロポリス
本来はアクロポリスは「高いところ、城市」を意味するそうですが、事実上、アクロポリスとは、アテネのアクロポリスを指しているといっても過言ではないでしょう。
アクロポリスにおける必見ポイントは、なんといってもパルテノン神殿。世界史の教科書のはじめのほうに出てくる、あの有名な建物です。
【歴史に思いを馳せる"想像力"】
アクロポリスに訪れたジョージアは、ツアーの観光客に次のように語り掛けます。
「円柱を通り抜ける風の音を聞いて 人類が何百年も聞いてきた同じ風の音 自然と人間の想像力とが出会う瞬間 これがにとっての歴史よ」
ギリシャの遺跡は、2000年以上前に建てられたものがほとんど。このため、パルテノン神殿などの一部を除いて、ほとんどの遺跡が原型をとどめていません。
著者もギリシャに訪れたことがありますが、特にデルフィの遺跡はほとんど原型をとどめておらず、大きめの石がそこらへんに転がっているという印象しかありませんでした。
ギリシャ旅行では、作中でいうところの「想像力」が、ギリシャ旅行には要求されるように思いました。
【ケフィ】
映画では「情熱」と翻訳されていた「ケフィ」というギリシャ語。
しかしながら、「ケフィ」という言葉をよくよく調べてみると、この単語には、楽しさ、幸福、刺激などなど、ポジティブな感情も意味合いを持つ単語だそう。
また、下の記事によれば、タフな状況に陥ったとしても、前向きに生きていくためのエネルギーといった意味合いもあるそう。
https://www.tripsavvy.com/what-is-kefi-1524279
このような「本来の意味」のケフィがテーマともいえる本作を見て、著者は、以前出会った本作の日本でバーを経営しているギリシャ人の言葉をふと思い出しました。
「ギリシャ人の友達は、いつもお金がない、お金がない、といっているけれど、毎日毎日飲みには遊びにいっているからね。」
彼はネガティブな意味合いで込めていっていたし、もちろん個人差はあると思いますが、「ケフィ」という概念はギリシャ人の根底にあるものなのかなぁ、と、ふと思いました。
【映画としての感想】
ちょっと都合がよすぎないか、と思わせるエピソードとわかりやすいストーリー展開であることもあって、短い映画の映画(90分)が体感として60分位しかかかっていないように感じてしまいました。