過去、そうそうたる顔ぶれの漫画が受賞しているマンガ大賞。
2014年の受賞作である「乙嫁語り」の舞台はなんと19世紀の「中央アジア」。
「そもそも中央アジアってどこだろう・・・?」
そんな人も少なくないと思いますので、以下では中央アジアの簡単な説明と本作の見どころについて紹介していきます。
1.中央アジアってどんなところ?
日本でほとんど馴染みのない地域と思われるのが中央アジア。
ユーラシア大陸のちょうど中央にあたるこの地域にある「カザフスタン」「ウズベキスタン」「キルギス」「タジキスタン」「トルクメニスタン」の5か国を指して、「中央アジア」ということが一般的なようです。
中央アジアでの主要な宗教はイスラム教。ちなみに西隣にあるのがイスラム教徒の多い新疆ウイグル自治区。
また、北側はロシア。中央アジアの国々はソ連から独立した国々でもあります。
2.19世紀 中央アジアの生活
本作の時代は19世紀後半。日本でいえば明治時代にあたるころ。産業革命を経て、人々の生活が近代化され始めた時代です。
しかしながら、ヨーロッパよりずっと東に住む中央アジアの人々は、そんな産業革命の恩恵をうけていません。
竈でパンを焼き、人の手によって「スザニ」と呼ばれる刺繍を入れた服を作り、遊牧民たちは財産となる家畜を育てながら、狩猟を行う。
本作では、そんな素朴な中央アジアの人々の服装、動物、食事などが非常に精緻に描かれています。1コマ描くのに、どのくらいの時間を費やしているのでしょうか・・・。
3.「乙嫁」たちの生活
本作の題名に使われる「乙嫁」は、「弟の嫁」「年少の嫁」という意味ですが、本作では「美しい嫁」という意味で使われています。
本作では「乙嫁」たちが多数登場しますが、彼らの生きざまも現在の一般的な日本人女性とは大きく異なります。イスラムの影響下で女性は髪を人前では出さず、そもそも市場に女性が行くことがはばかれる地域も。
また、結婚相手も、家長である父が決めることが絶対だったようです。結婚は「個人」と「個人」というよりも、「家族」と「家族」の結びつきを強くするためのものだったのでしょう。
このように現代の日本人から見ると「え・・・」と思うような状況下にある彼女たちですが、悲愴さはなく、ただ当時の価値観を前提として強くたくましく女性たちが描かれます。
ドキドキするようなストーリー展開はなく、ほとんどが中央アジアの人たちの生活ぶりに焦点があてられますが、素直に紀行モノとしても楽しめる作品。オススメです。